大分県厚生連 鶴見病院〒874-8585 大分県別府市大字鶴見4333番地
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健康のコラム

最新の「健康のコラム」

「チョコレート」
総合内科 池脇 淳二

 最近私の外来では、高脂血症も担当することとなりました。健康診断でコレステロールが高いと指摘されて受診される方も多く、高脂血症が増加傾向にあることを実感しています。コレステロール、特に悪玉コレステロールを増加させる食品は多くあり、卵、脂身の多い肉、バター、チーズなどが有名ですが、チョコレートもその一つで飽和脂肪酸を多く含むため悪玉コレステロールを増加させる作用がありようです。しかし、一方でチョコレートにはポリフェノールという物質が多く含まれており血圧降下作用があるとも言われています。
 海外の研究ではチョコレート(この場合は脂肪分の少ないダークチョコレートという種類のチョコレートを使ったようです)を少量ずつ摂取した人にわずかですが血圧低下作用があったようです。チョコレートを多く食べると血圧にはいいけど、コレステロールには悪いという結果になってしまいます。高血圧と高脂血症はどちらも動脈硬化には密接に関係しており、ひとつの食品(この場合チョコレートですが)がその良い効果、悪い効果の両方を持っていることは興味深いように思います。テレビなどのメディアでは体に良いものとして多くの食品が紹介されていますが、一つの食品に偏ることでまた他の悪影響が起こる可能性もあるのです。すべてにおいてバランスよく食べることが大事なのではないかと考えています。

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「抹消腎不全の治療(腎代替療法)
 高齢者にやさしい自宅でできる腹膜透析(CAPD)」
腎臓内科 安森 亮吉

 近年、透析患者さんが高齢化し、透析治療開始の患者さんの平均年齢は68.44歳で、今後一層高齢化が進みます。  腎不全の治療法には、①腎移植②腹膜透析(CAPD)③血液透析があります。①腎移植が最もいい方法です。②腹膜透析は在宅療法となり③血液透析に比較して生活が安定します。  CAPDの特徴は、血液透析に比較して、腎機能をより残すことが可能で、保存期腎不全の治療となり、血液透析移行までの治療法としても有効で、誰でも出来るやさしい方法です。特に高齢者には、心・循環器系への負担が少なく体にやさしい治療法です。また、高齢者の方は、小柄な体格・基礎代謝が少ないことより、CAPDも低頻度・低用量の透析治療で、在宅で個人の体調・介護者の時間に合わせることも出来ます。また、自動腹膜灌流装置(透析液を自動的に交換する機械)を用いると簡単に行えます。国も在宅医療を推進していることもあり、理にかなった方法でもあります。注意すべき点は、腹膜炎に気を付けてもらうことです。近年、介護サービス・訪問看護・在宅介助を含めた地域連携が充実してきており、より在宅治療が行える環境での腹膜透析治療が期待されています。

「人間ドックでわかる今の自分」
大分県厚生連健康管理センター 佐藤 竜吾

 今JAでは、みなさんの健康をお守りするために、年に1回人間ドックを受けるよう呼びかけています。
 健康は重大な関心事であり、本来、生活習慣病や癌は、病気になって症状があらわれてからでは治療が困難です。家族や自分の為に体の点検だと思って一度受けてみてはいかがでしょうか。健康なうちに、人間ドックを受け、健康をチェックして、自己管理に努めましょう。
 人間ドックをより受けやすくするために補助金制度があります。
①ご加入の健康保険によっては人間ドックや特定健診を受けると補助金が出る場合があります。お手元に特定健診受診券と書いてある用紙があれば、人間ドックを受ける場合に補助金が出ますのでご確認下さい。
②75歳以上の方は健康保険(後期高齢者医療広域連合)より補助金が出ます。
③その他、お住まいの市町村等より補助金が出る場合がございます。
 人間ドックについてのお問い合わせ、ご相談は是非、健康管理センターまでご連絡下さい。

「肝臓外科手術とは」
肝胆膵外科 柴田 浩平

 眠れる臓器とも呼ばれる肝臓は、①消化吸収された食物を、人間が活用できるように変換する、②胆汁を生成して、栄養吸収、善玉腸内細菌の維持、不要な物質の排泄、などを担っており、生命の維持に不可欠な臓器です。
 肝臓や胆管、胆嚢などに癌ができると、肝切除が必要となりますが、肝切除の際には、生命維持に必要な肝臓を残さなくてはなりません。癌に対して肝移植を適応する場合は、肝をすべて摘出すれば癌が治る可能性が極めて高い場合のみです。通常は癌の範囲と、肝機能を十分に検討した上で、どの程度肝臓を摘出するか決定します。肝機能が良好であれば、60~65%の肝臓を摘出しても大丈夫で、通常3~4週間でほぼ元通りの大きさに再生されます。(人間の中で、唯一自分で再生できる臓器です)。しかし肝臓がんの患者は、肝炎・肝硬変を合併して肝機能が低下している場合が多く、肝機能が悪い場合、30~40%切除程度でも、しても助からない場合があります。多角的に肝機能を予測し、手術が与えるダメージ(難易度、切除量など)を想定しつつ、適切な手術を実践する、それが肝臓外科の難しさでもあります。

「幹細胞と病気について」
肝胆膵外科 柴田 浩平

 ノーベル賞のIPS細胞(人工多能性幹細胞)を知っていますか。幹細胞って想像できますか?ヒトも最初は一つの細胞から発生して、それぞれの臓器ができます。各臓器にはそれぞれ元となる細胞(幹細胞:IPS細胞よりはもっと各臓器の細胞に近い)があります。幹細胞は通常は分裂しないのですが、周りから刺激を受けると細胞分裂が始まり、次々と自分の子供の細胞が増え、働きのそれぞれに分化して臓器ができます。たとえば腸炎が起きて下痢をすると、超粘膜の細胞は剥げ落ちますが、腸管にある幹細胞が刺激を受けて細胞分裂が始まり、元通りの超粘膜に戻ります。IPS細胞を発見した山中教授の研究は、ある細胞に4つの遺伝子を導入させると、あらゆる細胞に分化する能力を得る(IPS細胞になる)ことを明らかにしたことでした。慢性腸炎の患者さんは超粘膜再生しにくいのですが、IPS細胞からできた超粘膜幹細胞を移植して治療するといった時代が来るかもしれません。
 癌治療でも幹細胞が注目されています。がん細胞は無秩序に体の中で増え続けますが、がん細胞の中にも幹細胞(がん幹細胞)があると想像されています。がん幹細胞も通常は細胞分裂しにくいのです。そのため細胞分裂する際に効果がある抗癌剤や放射線治療などは効きにくいがんがあります。がん幹細胞の存在とその特徴を明らかにして、がん治療に役立てようという研究が盛んに行われています。

「膵の働きと膵がんの予防について」
肝胆膵外科 柴田 浩平

 膵は腰椎の前で胃の裏にあり、重さ100g・長さ15cmくらいの臓器で、強アルカリ性でアミラーゼ、トリプシン、リパーゼといった消化酵素を豊富に含む膵液を十二指腸に出しています。膵は同時にインスリンなどのホルモンを出して、効率よく食べ物を消化しています。人間の膵の重さは、体重比でみると0.14と、羊(0.049)や牛(0.068)と比べ2倍以上と顕著に大きい特徴があります。これは人間が加熱した食品(消化酵素が失活)を食べてきたことが原因と考えられており、米飯(加熱した炭水化物食品)が主食のフィリピン人とレア肉が主食の米国人では、フィリピン人の膵が25~30%大きいそうです。膵がんは日本でも増え続けていますが、動物の膵がんは稀であり、人間に起こりがちな膵への過剰負担が、膵がん発症の原因である可能性があります。膵がんの危険因子には、膵毒性を有する喫煙、アルコールをはじめ、過栄養状態(膵に負担がかかっています)である肥満、糖尿病などがあります。肉食では調理肉がレア肉よりリスクが高く、焼きすぎによる発癌物質の発生が疑われています。一方リスクを下げる因子には、野菜、果物、食物繊維などがあり、生鮮品は酵素活性が保持されていますので、膵への負担を軽減していると考えられます。喫煙、過飲酒、過栄養を避け、野菜、果物など安全な生鮮食品の摂取を心がけることは、膵がんの予防につながる可能性があります。

「胃や大腸だけでなく小腸も内視鏡検査ができます(1)」
消化器内科 永井 敬之

 小腸は消化管の中で、栄養の吸収を一手に引き受けている一番重要な臓器です。しかし口からも肛門からも遠く内視鏡検査ができなかった「暗黒の臓器」でした。幸い小腸には病気が少ないとされていました。
 しかし、全小腸の観察ができ、小腸の腫瘍や炎症、血管性病変などを早期発見・治療することができる、小腸専用のダブルバルーン内視鏡が2004年に発売されました。当院では2007年に導入しました。
 ダブルバルーン内視鏡は、内視鏡と筒の二重構造で、筒を通して尺取り虫のように進みます。
 内視鏡と筒の先端にはそれぞれバルーンがあり、膨らませて腸を固定。内視鏡と筒を手前に引いて小腸を見やすくまっすぐにして内視鏡を進めます。これを繰り返すことで、わずか長さ約2mの内視鏡で全長約6~7mの小腸全体を見ることができます。

「胃や大腸だけでなく小腸も内視鏡検査ができます(2)」
消化器内科 永井 敬之

 現在、小腸の内視鏡検査にはダブルバルーン内視鏡とカプセル内視鏡があり、どちらも鶴見病院に導入しています。カプセル内視鏡のカプセルは少し大きめの薬剤のような形で直径11mm、長さ26mmです。このカプセルを飲み込むだけで検査が可能です。少量の水で口から飲み込み、消化管を通過しながら小腸の内部を撮影していきます。撮影された画像はあらかじめ腰に装着したデータレコーダーに保存されます。外来で検査する場合は、検査中(約8時間)は仕事や家事などの日常生活を送ることができ、行動制限はほとんどありません。カプセル内視鏡は使い捨てタイプで、排便時に自然に排出されます。  カプセル内視鏡検査は原因不明の消化管出血に対して保険適応となっています。消化管出血の大部分は上部消化管(食道、胃、十二指腸)か大腸に原因があります。出血があったのに胃や大腸の内視鏡検査をしても異常がない場合、カプセル内視鏡検査が適応になります。2007年10月から保険適応が認められました。保険適応(3割負担)の場合、かかる費用は約3万円程度です。
 わが国で利用可能なカプセル内視鏡は小腸の観察用です。胃カメラや大腸内視鏡が苦手だからカプセル内視鏡で検査というわけにはいかないのですが、海外では食道用や大腸用のカプセル内視鏡も開発されており、いずれ利用できるようになる可能性があります。

「早期胃がんに対する内視鏡的治療について(1)」
消化器内科 永井 敬之

 早期胃がんに対する内視鏡的治療は1970年代のポリペクトミー術に始まりました。ポリープ状に隆起した病変をスネアで把持して高周波電流で切除する方法です。1980年代になると、平坦な病変に対して、粘膜下層へ生食を局注してスネアで切除するEMR(内視鏡的粘膜切除術)が登場して一気に広がりました。1990年代になると、内視鏡の先端にフードをつけてフード内に病変を吸引して切除するキャップ法で、より大きな病変の切除が可能となってきました。
 しかし2cm以上の病変や潰瘍瘢痕病変は一括切除ができず、遺残・再発の問題がでてくるようになり、こうした病変を一括切除するために開発された方法が、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)です。
 ESDは、病変の周囲に高周波電流でマーキングをして、粘膜下層に局注したのちに、病変周囲の全周切開し、粘膜下層を剥離して切除します。スネアで切除するのではなく、ナイフで剥離していくところが、これまでの方法との大きな違いです。ESDの開発には、切れがよくて、出血しても止血能力の高い高周波発生装置の開発と、さまざまなナイフの開発に寄与するところが多いとされています。

「早期胃がんに対する内視鏡的治療について(2)」
消化器内科 永井 敬之

 前回、新しい内視鏡的治療法としてESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を紹介いたしました。ESDでは、従来の方法に比べて、より大きな病変の一括切除が可能となりました。
 鶴見病院では2004年6月にESDを導入しました。現在までの症例数は、475例で、その内訳は、早期胃がん278例、胃腺腫148例、大腸がん38例、食道がん11例です。早期胃がんの治療成績は適応病変(ESDで治療できる条件、具体的には2cm以下で潰瘍のない粘膜内にとどまる高分化腺癌)では、完全一括切除率は92.6%という高い成績を示しています。これは大分県内の他の施設と比べて高い値を示しています。
 ESDのメリットは①大きな病変の一括切除が可能。②正確な病理診断が可能。③遺残再発を減らすことができる。④潰瘍瘢痕病変の切除も可能ということです。しかし、デメリットとしては、①主義の難易度が高い。②時間がかかる。③偶発症の頻度が高い。④多種類の処置具や薬剤が必要。ということがあげられます。しかし、新しい電気メスや高周波発生装置の開発、日々の研鑽や多くの症例の経験により、こうしたデメリットは克服されています。
 ESDの導入によって、内視鏡的治療の適応が広がり、従来、外科的治療をしていた症例が内視鏡的治療が可能になり、低侵襲で癌の遺残・再発の少ない治療が可能となり患者さんの治療に対するQOLの改善につながっているものと考えます。

「大分県人のほとんどが知らない郷土の誇り
 心臓ペースメーカーの父 田原淳博士」
循環器内科 直野 茂

 危険な不整脈の治療で、心臓ペースメーカーという名を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし田原淳博士のことを知っている人はほとんどいません。この機械のおかげで日本だけでも年間4万人もの患者が手術を受け、命が助かっています。このペースメーカー治療の基礎となる発見したのが、大分県安岐町出身の田原淳先生です。東京帝国大学を卒業しドイツへ留学。そこで「心臓刺激伝導系」心臓は一定のリズムの電気刺激で動くことを発見しました。
 心臓は心房と心室があり、交互に規則正しく動き、血液を送り出すことができる。この電気信号を送る電線が「刺激伝導系」で、特に心房と心室の中継地点の房室結節を「田原の結節」と呼び、世界中の教科書に書かれています。心臓は電気で動く「刺激伝導系」の発見は心電図の発明や心電図による診断につながっている。田原博士は「心臓病学の父」なのです。同時代には北里柴三郎や、野口英世といった伝記が多数書かれ、広く子供たちにも知られている医学者も活躍していたが、彼らと同等かそれ以上の評価を受けるべき医学者を我が強度が輩出したということは、大分に生まれ育った循環器専門医として誇らしく思うものであり。

「肥満と動脈硬化」
循環器内科 篠崎 和宏

 肥満(太りすぎ)は気になりますね。今回は肥満と心臓や高血圧の話です。
 あなたの肥満度を数字で表すBMIという簡単な計算式があります。

 BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

 BMI22が標準体重で、BMI25以上は肥満です。
 簡単な計算ですから、まずご自分のBMIを計算してみましょう。
 肥満は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の原因の1つです。欧米人はBMIが21以下の標準的な人と比べて、25~29の人は虚血性心疾患の危険が1.3倍、29以上では1.9倍となります。日本人はBMIが26以上になると、虚血性心疾患が5倍も高くなります。つまり日本人は欧米人と比べて脂肪蓄積による肥満の悪影響を受けやすいのです。
 また、体格と日常生活での運動量にも関係があります。肥満の人は運動量が少ない人は、狭心症や心筋梗塞になりやすいのです。というのは肥満はメタボリック症候群を引き起こし、全身の動脈硬化で多くの病気に関係します。実際に、糖尿病、高脂血症、高血圧と関係が深く、若い人の高度肥満者では喫煙率が多く、病気になる可能性が高いのです。皆さんも心配されているように、肥満はいろいろな病気の引き金になります。
 では、肥満を解消するためにはどうすればよいでしょうか。
 適切な運動及び食事療法が大事なのはいうまでもありません。しかし、運動すればすぐに体重が減少するわけではないことは実感されていますよね。では運動の効果はないのでしょうか。いやいや運動は体にはいい効果があるのです。運動によって血液中の糖分をコントロールするインスリンが働きやすくなり、脂肪合成の低下や運動時のエネルギー源として脂肪分解をおこします。さらに中性脂肪の低下、HDL(善玉)コレステロール増加などの脂質代謝の改善や血圧を低下させる作用もあります。
 適切な体重管理には運動療法と食事療法が必要です。運動療法としては軽く息が上がる程度の有酸素運動(歩行やジョギングなど)を1日30分以上、週に3回は行うことがいいようです。継続は力なり。三日坊主に終わる人が多いのですが。

「脈診(第一部)」
循環器内科 財前 博文

 もう十年以上前になるが、中国旅行の際に立ち寄った漢方医学研究所なる施設での体験である。そこでは、なにやら白衣を着た医師らしき風体の漢方医学者(?)が、来場者の脈を診ながら病気の診断を行い、適切な漢方薬を勧めていた。
 漢方医学では脈を診ることを脈診と呼び、それだけで全ての病気が分かるとのことであった。
 循環器専門医である私からみても、脈だけで分かることには限界があり、西洋医学の常識では理解できない行動であることは間違いない。彼らの行動を観察すると、来場者にいろんな質問をしながら脈を診ているのである。つまり、脈から診断するのではなく、問診から診断しているだけのようにも思えた。
 多少の胡散臭さもあるものの、これが中国四千年の歴史かと妙に漢方医学に興味がわいたのも事実である。
 さて、西洋医学では、脈を診ることで何が分かるのであろうか。
 脈拍が早いか遅いかはすぐにわかる。
 早ければ、貧血や発熱、甲状腺機能亢進症、心不全、呼吸器不全等の病態が考えられるし、遅ければ、スポーツ心や洞機能不全症候群等も考える必要がある。

「脈診(第二部)」
循環器内科 財前 博文

 脈の乱れから不整脈を知ることも出来る。時々脈が抜ける(結滞)だけなら期外収縮と呼ばれる不整脈であることが多く、治療する必要のないことが大半である。
 一方、脈拍が突然150以上になるような頻脈発作もある。多くは、発作性上室性頻拍症と呼ばれるものであり、数分から数時間で停止することが多く、若い人にもみられる。
 また、脈が完全にバラバラになれば心房細動と呼ばれる不整脈の可能性が高く、不快感だけではなく、脳梗塞等の病気を引き起こすことでも注意が必要である。
 さらに、多少の熟練が必要ではあるが、脈が強く(速脈)感じられたら大動脈便閉鎖不全症、反対に脈が弱く(遅脈)なれば大動脈弁狭窄症と診断できる。
 心電図、心エコー等診断機器が充実した現代において、脈を診ることは軽視されがちであるが、いまでも大切な診断方法であることには違いない。むしろ、診断機器が進化した現代医学であるが故、患者と医師の間に脈の通った医療が求められているように思われる。

「腰痛+貧血=血液がん?」
血液内科 安藤 健明

 先日、二か月前から持続する腰痛を理由に六十代の男性が受診されました。もちろん、血液内科の話です。「多発性骨髄腫」という病気をご存知でしょうか?白血球の一種である形質細胞が腫瘍化した血液がんです。「多発性」という名が示す通り、全身の骨髄で生じます。その結果、骨がどんどん薄くなってしまい、咳をしただけで肋骨が折れる、ベッドに移ろうと手を付いた際に腕が簡単に折れるといった病的骨折が起こり得ます。最も折れやすいのは荷重がかかる背骨で、前述の患者さんのように圧迫骨折による激しい腰痛を訴えます。
 高齢者ほど罹患率が高い疾患で、発症の平均年齢は64.5歳です。高齢者には一般に腰痛や骨折がよくみられますが、腰痛に加えて貧血、蛋白尿などの腎障害などを認める場合には多発性骨髄腫が強く疑われます。
 貧血の原因は、骨髄が腫瘍細胞で満たされて性状な赤血球が造れなくなるためと、腎機能の悪化に伴い赤血球を造るのに必要なエリスロポエチンというホルモンが少なくなるためです。
 長い間治療法に進歩がみられず難治性であった多発性骨髄腫ですが、この数年間でサリドマイド(商品名サレド)、ベルケイド、レブラミドといった新規薬剤が承認され、コントロールできる病気になりつつあります。
 早期発見、早期治療が重要な病気ですので、持続する腰痛を認める際には血液内科受診をお勧めします。原因不明の貧血のある方もご相談ください。

「ウィルス感染が起こす血液がん」
血液内科 安藤 健明

 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)という病気をご存知ですか?「献血をしたら、抗HTLV-1抗体が陽性と言われました。」と受診される方がいます。名前が難しいので関心が少ないのですが、九州には多いのです。HTLV-1とはヒトT細胞白血病ウィルス1型の略で、抗体の陽性はこのウィルスに感染しているということです。そして、このHTLV-1が血液のがんである白血病(ATL)をひき起こすのです。
 では、いつどのようにしてこのウィルスに感染するのでしょうか?
 日本における感染の約8割は、乳幼児に母乳からのものです。しかし、感染から発症までにはかなりの時間があり、発症年齢の平均は60代前半です。40歳以前に発症する人は非常に稀で、献血で見つかる人のほとんどは発症前のキャリア(保有者)です。HTLV-1キャリアは日本全国に120万人いると言われていますが、ATLを発症するのはそのうち約5%です。また、ATLの中にはすぐに治療を必要としないタイプもあるので、専門医による診断が重要と考えます。
 ATLは「九州や沖縄の風土病」と長い間考えられていました。キャリアの約50%が、これらの地域に偏って分布しているからです。そのため、全国規模での対策が遅れてしまい、妊婦健診の項目に追加されたのは2010年秋でした。
 母乳以外の感染経路として夫婦間などの感染もあるため、血液検査で抗体陽性と言われた人はもちろん、その家族の方も一度血液内科外来を受診することをお勧めします。

「氷は好きですか?」
血液内科 安藤 健明

 「異食症」という言葉をご存じでしょうか?異味症、異嗜症とも呼ばれ、「氷をかじりたくなる」という鉄欠乏性貧血の患者さんにみられる症状の一つです。
 冷たいものが好きというわけではなく、氷のような硬い塊をボリボリかじりたくなるという不思議な症状です。
 何故このような症状が生じるかはよく分かっていませんが、古い教科書にも「生米や壁土を食べること」という記述があります。今では、手軽に手に入る氷が主役の座を奪ったということなのでしょう。
 ところが、健康診断などで貧血を指摘された患者さんは、「自分の『氷かじり』はただのクセ」のように思っていることがほとんどです。そのため、診察室で「氷をよく食べませんか?」と尋ねると、驚いた表情で「ハイ・・・」と答えられます。
 ある調査では、鉄欠乏性貧血患者の約14%に異食症が認められました。より高度の鉄欠乏状態が長く続いている患者さんに多く見られる傾向があるようです。
 このように不思議な症状・異食症ですが、鉄剤の内服を開始すると数日以内に消えてしまいます。患者さんによっては、数年間続いていた「氷かじり」がわずか数日間で見られなくなるのです。
 鉄欠乏性貧血の多くはほかの病気があります。そのため、貧血と言われた方はもちろん、異食症に心当たりのある方も一度血液内科外来を受診することをお勧めします。

「どの位の運動が体にいいのでしょう」
循環器内科 前田 智

 高血圧や糖尿病などの生活習慣病は血管を固くぼろぼろにして、動脈硬化を起こす血管の病気なのです。それが引き金となって突然心筋梗塞や脳梗塞の病気になるのです。
 ところで、病院や健康診断に行く度に「運動しましょう」と勧められている方は少なくないでしょう。適度の運動が生活習慣病を予防するからです。ではどのくらい運動すればいいのでしょうか。
 運動には大きく分けて有酸素運動と無酸素運動の二つあります。生活習慣病予防には脂肪が燃焼される有酸素運動が最適です。
 まず手首の親指の付け根に指をあて、脈拍を30秒間計り、2倍にして1分間の脈拍数を出します。通常は60回です。
 運動の目安は30~40歳代で120回/分、50~60歳代で110回/分前後が目安です。こんなに脈拍数が多くていいの!?と思われるかもしれませんが、案外少し早めのウォーキングでも達成出来る脈拍数なのです。脈拍を測るのが難しい方はやや息切れをする程度を目安に運動をして下さい。それくらいの運動だと身体に負担が少なくないのです。可能なら30分以上、週に3回以上をお勧めします。
 脂肪も減り、体重も減ると体が軽くなり、きっと運動が楽しくなり生活習慣も改善するでしょう。オリンピックでスポーツに注目が集まっている今、皆さん運動を始めてみてはいかかですか。

「うがいとインフルエンザ」
総合内科 池脇 淳二

 2014年に入り、インフルエンザの流行期になってきました。今日は昔からインフルエンザ予防として行われていた「うがい」について考えてみたいと思います。実は以前から「うがい」の効果には疑問視する見方がありました。これは、「うがい」が日本独自の風習であることによります。「うがい」という言葉の起源は「鵜飼い」だそうです。いったん魚を飲み込んで、その後吐き出す様子が似ていることから「うがい」と呼ばれるようになりました。海外でも、歯を磨いた後や口臭予防などのために経口洗浄液で口を「すすぐ」ことはありますが、のどまで水を落として「ガラガラ、ペーッ」とやる行為は、日本独自の風習で、日本以外の国では「はしたない行為」とされているようです。
 昨年厚生労働省が出したインフルエンザの感染予防の項目に「うがい」は記載されておらず、その科学的根拠はないと結論付けられました。これはインフルエンザウィルスが咽頭粘膜に接触して約20分で粘膜内に侵入するため1日3回ほどのうがいでは効果が期待できないとなったようです。現実的に20分毎にうがいをすることは不可能です。ただ、インフルエンザではなく一般的な風邪であれば、うがいの予防効果を実証した研究もあります。しかし、この際もイソジンなどの消毒薬では効果がなく、普通の水でのうがいの方が予防効果があったようで、何か意外な感じがします。手洗いや、体調の管理、ワクチン接種でインフルエンザにかからないように注意していきましょう。

「風邪と入浴」
総合内科 池脇 淳二

 寒い季節となり、私の外来にも風邪を引かれた患者さんが多数来院されるようになりました。診察時、よく聞かれることに「風邪の時にお風呂に入ってもいいですか?」というものがあります。私は、「高い熱がある時や体がきつく体力消耗状態にある時は控えてください。それ以外は入浴しても大丈夫です。ただ長風呂はせず、お風呂から上がった後は髪の毛を乾かすなど湯冷めをしないようにしてください。」と答えるようにしています。入浴せず不潔にすることによって皮膚病など他の疾患を引き起こすことにもなりかねません。
 実は、この「風邪の時は風呂に入らない」というのは日本独自の風習のようです。実際私も小さいときは両親から同じように言われてきました。その由来としては二つあり、一つは昔の日本の住宅は換気を重視した設計で風通しが良かったため入浴後に湯冷めを起こしやすかった、もう一つは銭湯などに行った帰りに湯冷めをして風邪が悪化する人が多かったというものです。どちらにしても湯冷めがキーワードのようです。専門の方の話では湯冷めをすると急激に対応が奪われるため低体温となり、免疫力が下がることで風邪のウィルスが増殖しやすくなるのではないかと言われているようです。
 昔の人にとっては大事な生活の知恵だったのですが、現在では住宅事情も変化していますので、湯冷めをしないように注意して入浴されれば風邪を悪化させることはないと思います。

「最近話題の腎臓病(IgA腎症)」 病気の診断―腎生検有用性―
腎臓内科 安森 亮吉

 ~はじめに~
 慢性腎臓病は免疫機能が関係しています。少し難しいのですが、免疫の働きが狂った時に起こる腎臓の病気です。特に日本人にはIgA腎症という慢性腎炎が多く、透析治療が必要となる代表的なものの一つです。

 ~IgA腎症とはどんな病気~
 腎臓の一部に蛋白質の免疫グロブリンA(IgA)が付着して起こる腎炎です。診断のために腎生検が必要で、診断および重症度がわかります。
 症状は多くの場合、自覚症状なく持続性の目には見えない程度の血尿(顕微鏡的血尿)や軽度の蛋白尿だけで、検診での検尿検査で初めて分かることが多いのです。時に発熱後に肉眼的血尿もあります。以前は、良性の病気と考えられていましたが、腎生検が普及するにつれ、必ずしも良性とはいえないことがわかってきました。また、病気の状態が時期によって変化しますので、現在の腎生検で問題がなくても、数年後には状態が変わってくることがあります。(多くは十から二十歳代で発症し、二十年後に約40%が慢性腎不全になるのです。)治療は、慢性腎炎に対する一般的な治療・食事療法・降圧剤による高血圧治療・蛋白抑制・腎保護効果剤があります。
 最近では、IgA腎症の積極的治療法として、扁桃腺摘出術+ステロイド療法が注目されています。これは扁桃腺が免疫に関係しているからです。改善することもあり、特に早期症例では改善率も高く有効です。蛋白尿の多い重症例でも、病気の進行を抑えることで有効な治療法となっています。

「尿の検査でわかる腎臓の病気」
腎臓内科 安森 亮吉

 ~検尿でわかること~
①腎臓病の早期発見で、さまざまな病気があります。腎結石・急性胃炎・IgA腎症などで肉眼的血尿を見る場合や、ネフローゼ症候群で、むくみがひどいときは受診しますが、腎臓病の多くは、無症状が多いのです。検尿は早期に発見する最も簡単な方法です。
②なぜ検尿をするのか。
 無症状でも検尿で異常がみつかり、いろんな病気の手がかりになります。腎臓病の大部分は検尿の異常があり、症状のない腎臓病をみつけるきっかけになります。
③どのような尿を検査するのか?
 朝1番の安静時の尿、激しい運動後の尿、発熱時の尿、女性の方では整理中などの尿、いろんな条件で尿は変化します。一般に、腎臓に病気がある場合には、安静時にも異常を認めることが多いので、早朝尿を検査します。発熱時や、運動後の検尿では、隠れている腎臓病を見つけます。
④検尿でなにがわかるのか?
 腎臓病の検査としては、蛋白・血尿・白血球などです。そのほか比重・PH・糖・ケトン体・ウロビリノーゲンなどもわかります。
⑤尿沈渣とは尿を遠心した後に得られる沈殿成分です。細胞・円柱・結晶・微生物などがあり、腎臓の病気の診断・活動性もわかり有用です。

 腎臓の病気の発見には、まず第一に検尿検査が重要です。

「3時間から4時間30分へ」
脳神経外科 加賀 明彦

 脳梗塞に対する血栓溶解療法をご存じでしょうか。脳梗塞は、脳の血管がつまる病気で、一旦生じると手足の麻痺や言葉の障害などが残ります。そこで脳の細胞が死んでしまう前に、つまった血管を再び流れるようにするのがこの治療です。アルテプラーゼという薬を点滴して、血管の中の血の塊を溶かす治療で、日本では2005年10月に認可されました。この治療は、血管が再開通すれば後遺症なく治る可能性があるのですが、治療開始までの時間が長いと出血する危険性を伴うため、当初は発症3時間以内の場合のみ投与可能でした。しかし、検査に約1時間要するので、この治療を受けるには発症2時間以内に来院しなければならず、せっかく認可されたのに対象になる患者さんは多くありませんでした。
 そこで調査を進めたところ、発症4時間30分以内なら同じ効果、危険性であることがわかり、2012年8月から適応時間がこれに延長されました。対象は増えましたが、治療開始が早いほど効果が高いことに変わりはありませんので、手足の力や、言葉に異常を感じたら、すぐに救急車で病院に行くことを心がけてください。また、この治療には時間以外にも条件がありますので、適応は医師の判断に従ってください。

「水は飲めば飲むほどいいのでしょうか?」
脳神経外科 加賀 明彦

 暑い日が続いています。今年は5月頃から熱中症が話題になっていましたので、早めに対策をとられてた方もいらっしゃるでしょう。熱中症の予防として水分補給を励行されている方が多いと思われます。では水を飲む量は多ければ多いほどいいのでしょうか。最近、体の調子が悪いと病院に来られる方の中に、血中の塩分が少なくなっている方が少なからずいらっしゃいます。低ナトリウム血症という状態です。話をうかがうと、熱中症を防ごうと、とにかく水を飲んでいたそうです。熱中症を防ぐには確かに水分摂取が必要なのですが、必要以上に水分摂取すると血液が薄まり過ぎてしまい低ナトリウム血症となり、これが進行すると意識障害を起こしてしまいます。ナトリウムの濃度は体内の調節機能により保たれているのですが、多量に汗をかいた場合は、体内の塩分が汗として出てしまいますので、塩分が不足しがちになります。ここで多量の水を飲むと血液が薄まり過ぎてしまうのです。発汗の多いときは、真水よりはスポーツドリンク等の薄く塩分が含まれている飲み物を飲んだほうがいいと言われています。また、一度に多量の水分を摂るのではなく、少量をこまめに補給することが推奨されています。
 高血圧の予防のためには塩分を控えたほうがいいが、足りないと低ナトリウム血症になる。熱中症の予防には水分を摂ったほうがいいが、摂りすぎると低ナトリウム血症になる、あっちを立てればこっちが立たないのですが、何事も過ぎるとよくないということのようです。

「歯を抜く前に薬を止めていませんか?」
脳神経外科 加賀 明彦

 脳や心臓の血管がつまると脳梗塞や心筋梗塞が起こります。そのため再発予防に抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)を毎日飲みます。血管がつまるのを予防するのですが、出血すると血が止まりにくくなります。そのために、これまでは抜歯や胃カメラの時は前もってこれらの薬を中止していました。
 ところが、休薬中に脳梗塞や心筋梗塞を再発することがあり、調査してみると、脳梗塞の予防のためにワルファリンという薬を服用していて、抜歯のためにこれを休薬した患者さんの約1%がその期間中に脳梗塞を再発していたことがわかりました。脳梗塞は命にかかわることもあり歯と引き換えにしていいわけがありません。
 そこで、出血を伴う治療とその前の休薬について見直されました。抜歯は2010年に、抗血栓薬の服薬を続けたまま抜歯してもいいとされました、胃・大腸カメラの時も、観察のみや生検(細胞をとって調べる)のときは休薬しなくてもいいのです。
 学会のガイドラインで、抗血栓薬を休薬する基準がはっきり示されました。しましまだ休薬されている方がいます。抗血栓薬を飲んでいる方が抜歯や内視鏡を受けるときは、担当医や歯科医に相談してください。ただし、内視鏡的にポリープをとる時や、大きな手術など出血の危険が高い治療については前もって休薬が必要ですので、これも担当の医師の指示に従ってください。

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