SST
摂食・嚥下チーム

摂食・嚥下チーム(swallow support team:SST)

摂食・嚥下とは

当院に入院されている患者さんを対象として、摂食・嚥下チーム(以下swallow support team:SST)は加齢や脳血管障害、各種神経疾患、廃用症候群により摂食・嚥下機能の低下や障害をきたした患者に適切なケア介入を行い、誤嚥性肺炎、窒息等のリスクを回避し食べることを支えることを目的としたチームです。

摂食・嚥下(えんげ)とは、食物が認知され、口に取りこみ胃に至るまでのすべての過程をいいます。
摂食・嚥下障害とは、この一連の動作に障害があることです。

誤嚥(ごえん)とは、食べものの一部あるいは全部が食道ではなく気管に流入することをさし、飲食物・分泌物・胃内容物の誤嚥により起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。

当院でのSSTの介入は入院時に主治医より嚥下障害があると判断した場合、言語聴覚士(以下ST)による嚥下評価を行います。
その結果によりSTによる専門的な訓練を行っていき、また、必要に応じて看護師による食事のお手伝いや食後の歯磨きの手伝いも行います。

STだけではなく医師や看護師等、様々なスタッフが協力し質の高いケアに取り組んでいます。

メンバー

職種人数
医師1名
理学療法士1名
言語聴覚士2名
管理栄養士3名
NST兼務看護師
(NST専門療法士)
1名
看護師
(科長・師長含む)
15名

当院での活動内容

ラウンド(第2、第4金曜)

嚥下状態・口腔環境の悪化した患者さんのもとへ行き食事の状況を見て助言・指導を行っています。

カンファレンス(第2、第4金曜)・委員会(年6回)

各病棟の摂食・嚥下チームが集まり、患者さんの状況を報告し、ケアの情報共有を行っています。

学習会(年6回)

摂食・嚥下チームの委員に対し、言語聴覚士(ST)を中心に、摂食や嚥下、口腔ケアの学習会を行っています。

摂食・嚥下Q&A

歳をとるとむせやすくなるのはどうしてですか?

高齢者は加齢とともに歯が欠損し咀嚼(そしゃく:噛む力)能力の低下や、舌の動きが悪くなり、そのため唾液が出にくくなり、口の感覚が鈍く、塩味に対する味覚の低下などが生じてしまい、食べ物の送りこみが遅くなります。
また加齢とともに喉頭(のどぼとけ)の位置が低下するため、飲み込む際に十分に喉頭が上がらず、唾液および食べ物が喉に残りやすくなり誤嚥の危険性が高い状態になります。咳をしてしっかり出せればいいのですが、高齢になると咳をする力も弱くなってしまいます。

ムセにくい食事はどういうものがありますか?

介護食(高齢者向けの食事)は、自分の歯を失ったり唾液の分泌が少なくなったりして咀嚼する力が低下しますので、咀嚼しやすい食事が中心となります。それでも難しい場合は以下の点を考慮した食事を検討しましょう。

①柔らかく口のなかでまとまりやすいもの
細かく刻んだものや口の中でばらばらになるもの、サラサラの液体には市販のとろみ剤を使用し適度なとろみをつけてみましょう。

②性状が均質、かたさが均一
薬と水が一緒に飲み込みづらいことがあるように、液体と固体といった違う形態のものやかたさが異なるものは、飲み込みにくくなります。
また、市販のゼリーのふたを開けたときに、少し水が出ることや、食べている途中に水気が出てくることがあります。
これらを"離水"(固形分と水分が分離すること)といいます。離水が多いと気管に水が入る可能性が高く、むせたり誤嚥することがあるため注意が必要です。

ご飯が食べれなくなっています。どうしたらよいでしょう?

飲み込みの状態が悪くて食べられない場合はQ02に記載した食品を試してみましょう。
ミキサー食や柔らか食へ変えてみる等、食べやすいものを見つけてみましょう。
栄養が十分に取れない場合は、高カロリーの栄養補助食品も併用し栄養確保を行いましょう。

点滴やチューブから栄養をとっていれば誤嚥しないんですか?

口を使わず、胃に直接チューブを入れて栄養物を送り込む(経管栄養)状態の方でも、誤嚥性肺炎になることがあります。
睡眠中などに、唾液や残留物が気管に入り誤嚥性肺炎を起こすことがあります。

点滴やチューブから栄養をとっている時は歯磨きをしなくていいんですか?

口からものを食べていないから口の中は汚れないと思い込んでいる方が多いようですが、これは大きな間違いです。
人間は食べたり話したりできない状態が続くと唾液の分泌が少なくなり、口の中の汚れを洗い流すことができずかえって汚れがたまりやすくなります。
そのため経管栄養の方には歯ブラシだけでなく、舌などの口腔粘膜の汚れを取り除く口腔ケアが必要です。

寝たきりの母の歯磨きはどうしたらいいでしょう?

長く寝たきりの状態でいると、抵抗力が低下するので細菌や微生物に感染しやすくなります。
口の中を汚れたままにしておくと、さらに最近や微生物が繁殖し、体力を低下させるという悪循環に陥ります。
口の中や周りを湿らせたガーゼやスポンジなどで拭き、可能ならばブラッシングしてみましょう。
なるべく水分は切って使用しましょう。できるだけ短時間で済ませるようにします。
また、口腔内の乾燥が強い場合は、市販の保湿剤の使用も検討しましょう。

関連単語

誤嚥性肺炎(不顕性誤嚥)

誤嚥性肺炎とは、細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込むことで生じる肺炎です。
高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係しているといわれています。
再発を繰り返すという特徴があり、現在でも治療困難な事が多く、高齢者の死亡原因となっています。
誤嚥性肺炎の理由としては、「口腔や咽頭内容物による誤嚥」「胃逆流による誤嚥」があげられます。
これらは、老化に伴って起きる生理的な変化や脳血管障害や神経伝達物質(サプスタンスP)の減少で咳反射や嚥下反射の機能低下によって起こります。
また、嚥下反射の低下によりムセることなく知らない間に細菌が唾液とともに肺に流れ込む不顕性誤嚥による肺炎も多く見られています。
その他に、嘔吐などにより胃液が食べ物と共に食道を逆流して起こる事もあります。

逆流性食道炎

 逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液や、胃で消化される途中の食物が食道に逆流してそこにとどまるために、食道が炎症を起こし、びらん(粘膜がただれること)や潰瘍(粘膜や組織の一部がなくなること)を生じる病気です。
原因として「胃液の逆流を防ぐ機能の低下」「食道や胃の蠕動運動の低下」「腹圧の上昇」「胃液の分泌増加」「食物摂取量の増加」などがあります。
逆流性食道炎は誤嚥性肺炎の大きな原因の一つとなっている為、早めの診断と治療・対策が必要となってきます。

食道ヘルニア

食道ヘルニアとは、体の胸部と腹部の間にある「横隔膜」という筋肉でできた膜に食道や大静脈が通るための穴が開いており、その食道が通っている穴(食道裂孔)から胃の一部が上の胸部に脱出してしまっている病気です。
食道ヘルニアには、「食道と胃のつなぎ目(噴門部)が胸部に出ているタイプ」「胃の一部が出ているタイプ」「この2種類が混合したタイプ」があります。
原因として「(肥満、喘息、慢性気管支炎により)腹部の圧力が高い状態」「(先天性・加齢により)食道裂孔がゆるい」「背骨が屈曲している」などがあリます。
食道ヘルニアは誤嚥性肺炎の原因の一つとなっています。
診断される事で誤嚥性肺炎の予防対策が行えます。当院では、食道造影検査で発見する事も可能となりました。

経管栄養

経管栄養とは、口から食事を取る事が困難な患者さんに体外から胃や十二指腸に管を通して栄養を投与する方法です。(広義での経管栄養は点滴による栄養注入も含まれますが、ここでは消化器を用いた栄養法を意味します。)
対象患者としては腸の機能が保たれている全ての患者さんです。
「口腔機能・嚥下機能低下により経口摂取が困難な患者」「何らかの原因で食事摂取量・必要摂取カロリーが不足している患者」に対し、経管栄養の必要を検討し選択します。
経管栄養の種類としては、鼻から管を挿入する「経鼻経管栄養」、直接体外から胃(腸)に穴を開け管を通す「胃(腸)ろう」があります。
経管より栄養剤を注入しますが、当院では栄養剤による難治性の下痢に対しては治療食をミキサーにかけたミキサー食を注入し全身状態の改善が見られた症例もあります。

当院での食事

常食
常食
一口大刻み・刻み・極小刻み
一口大刻み
極小刻み

咀嚼動作はあるが、咀嚼能力が低下(義歯があってない)している方

極小刻み・とろみ
極小刻み・とろみ

咀嚼能力が低下しており、飲み込む力が弱い方

ソフト食
ソフト食

咀嚼能力が低下し舌や口唇の動きが悪く、食塊形成が十分にできない方

ミキサーとろみ
ミキサーとろみ

咀嚼動作がほぼ見られず、飲み込み力が弱い方

食道造影検査

食道造影検査とは、透視下で造影剤の混ざった飲み物や食物を食べてもらい、食べ物がどのように流れ込んでいくかを確認する検査です。
これにより、嚥下状態や誤嚥を起こしているかを発見することができ、誤嚥性肺炎予防に対しての治療・対策を検討することができます。
当院では、嚥下障害が考えられる患者さんや誤嚥性肺炎を起こしている患者さんに対し検査を行っています。
検査は10分程度です。検査時には、主治医・言語聴覚士・放射線技師・看護師が常時待機しており安心して検査を受ける事ができます。
放射線量は、6~9mSvでレントゲンより多くCTより少ない被爆量です。
撮影部分は限局されているため少ない照射で済みます。
この検査は皆さんに出来るだけ口から食事を取っていただくために行われるものです。
検査結果で安易に食事を止める事はありません。
患者さんにとって一番安全で必要な援助を一緒に選択していきます。

リンク

リハビリ技術科